豊岡・但馬の民話昔ばなし

唐木の寺

今から250年ほど昔の話です。当時の瀬戸のお寺『頂福寺』は、ウグイス張りの廊下を持つたいそう立派な建物だったそうです。

ある晩、お寺から大きな物音が聞こえます。
村の人が寺に駆けつけると、日頃は物静かな和尚さんが
『お寺が焼ける。お寺が焼ける!』
と叫びながら、まったく火の気のない本堂に水をかけています。
駆けつけた村人も、あまりに必死に水をかけ続ける和尚さんの姿を見て『よう分からんけど、和尚さんがしなることだで、手伝わんと!』と一緒になってお寺に水をかけ続けました。

そのことがあって、数ヶ月たった頃、唐の国の立派なお寺が火事で焼失したという話が伝わってきました。
聞くと、和尚さんの不思議な行動があった日と、同じ日だったことがわかりました。
海の向こうの唐の名寺の火事を察した和尚さんの徳に、ますます和尚さんを慕うようになりました。

そのお寺が宝暦4年(1754)に近くで起きた火事をもらい、今度は本当に全焼してしまいました。
村人は何とか早く寺を再建したい思っていましたが、資材がなかなか揃わず困っていたところへ、『但馬の国瀬戸頂福寺様へ』という札をつけた外国の木が海岸にたくさん流れ着きました。

村人は大変喜んで、この木を使ってお寺を再建しました。
当時、外国の木で作ったお寺は大変珍しく『唐木の寺』として、遠く、大阪や京都からもお参りがあったそうです。

ただ、これも残念なことに、天保13年(1842)の5月の大風の日におきた大火により76戸の民家と共に焼失してしまいましたが、戦前まで
『唐木の寺はどこですか?』
と訪れてくる人があったそうです。

  • ※写真は現在の頂福寺。当館から歩いて5分ほどのところにあります。